恋愛がしたいわけじゃなかったのに。
すごく打算的な、ただただ安定した暮らしを手に入れるための、子どもを作るための結婚がしたかったはずなのに。
友だちと会っていても、彼のことばかり考えてしまうし、何をしていても頭の中が彼の事ばかり。
誰か他人にこんなに心揺さぶられるなんて、こんな自分が恥ずかしいし醜い。
可愛いと思えない。素直に喜べない。
恋愛中毒な女の子ってこんな感じなのかなぁ。今までにない感覚なので感情のコントロールができない。
彼の事が好き過ぎて辛い。
どうしようもなく好きだ。
本当にどうしようか。
このままじゃ自分を見失うばかりだ。
もうこれ以上近づきたくない。
正気を取り戻したい。
彼がいなかった今までの、何事もない悶々とした日々に戻りたいのか。
呼ばれたらホイホイと、前の職場がある土地まで行ってるし。
わたしはせっかく都会に引っ越してきたのに、結局はまた、田舎の大型店があるあの場所へ戻っていることになる。
何かあの土地に因縁があるのだろうか。
嫌いじゃないよ、とてもいい場所だった。居心地も良かった。
けれど、戻ってしまったら本山さんみたいになってしまって、結局はまた同じことの繰り返しなのだろう。
離れているから戻ってもいいという気分になっているけれど、戻ったら戻ったで、絶対にまた逃げ出したくなる。
あーあ。
もっと考えることがあるでしょう。
***
とりあえず、そんなに深く考えないでおこう。
わたしと付き合ってくれる事を感謝して。
それだけで十分じゃないか。
彼には何も問題はない。
問題なのはわたしだ。わたしが気持ち悪いんだ。
本当はわたしからも好きになれるなんて、本当に稀な存在なのだから大切にしたいし、もっとずっと一緒にいたい。
そうよ、今まで浮いた話もなかったのは、わたしの心が閉じていたからでしょ。
少しずつ、彼によって開けられようとしているのだから。
このまま普通のキュートな女の子になりたい。
彼ならわたしを変えてくれる気がする。
絶対に変わってみせる。